Hakubiが好きな理由。
Hakubi…京都発スリーピースロックバンド。
過去に5枚のe.p.をリリースしていて、最近では"結e.p."をリリース。収録曲の"22"のMVではボーカル片桐さんが初顔出しをするなど大きな話題になった。
Hakubiはどちらかというとネガティブな印象を与えることが多い。
先日KANSAI LOVERSというフェスで、Hakubiのグッズを買おうと列に並んでいたら、後ろから『Hakubiを普段から聴くと病んでしまうから、逆に病んだ時に聴くな〜。私傷に塩を塗りたいタイプだから、病んだ時にHakubi聴いて余計に病みたい。笑』と話す声が聞こえてきた。
わかる。わかるぞ。傷に塩を塗りたい気持ち。
多分それはきっと、心の中の蟠りや悲しみ苦しみ寂しさなどのネガティブな気持ちを代理して声や音にしてもらっていることに安心するからだと思う。"人に悩みを打ち明けて共感してもらえればホッとすること"と同じ仕組みなんだと思う。
自分も昔からよく塩を塗ってきた。
高校の頃、精神が不安定な時にはSyrup16gを聴いた、THE NOVEMBERSを聴いた、plentyを聴いた。
Syrup16gは生きることに自暴自棄になっているようで、THE NOVEMBERS(初期)は世を操るものを恨んでいるようで、plentyは弱い人間の弱音のようで。代弁してくれているようで、よく聴いた。
一方、Hakubiだって、"だから『死にたい』って呟いてみる"(午前4時、SNS)、"クラクションひとつ鳴らされただけで死にたくなったんだ"(サーチライト)など自殺願望が表現されていたり、自己肯定感の無さや人生においての迷いなどが描写されていたり、ポジティブのポの文字もないほどネガティブに思う。
でもHakubiには従来のバンドとは少し違うところがあると思う。
Hakubiには、作詞作曲をする片桐さんの弱さがただ吐き出されているだけではなくて、その弱さに対する葛藤そしてなんとか対峙していく強い意志が表現されているのだ。
"治らない猫背で歩いていく"(Dark.)、"叫んでも痛むだけで増えていく傷も 消えないこの傷も 変わらない今も いつか私を照らすだろう"(17)、"負けるつもりはないからさ自分らしく生きろよ"(ハジマリ)などなど。
決意に溢れた曲を挙げるとキリがない。
そして僕の推測に過ぎないのだが、このような音楽をつくる作業は自分の精神を擦り減らして曲にしているようなもので、とてつもない心労だと思う。
自分の弱さと真摯に向き合い、その弱さと決意を言葉にし、机に並べ、さらにはそれらを音に組み立てていく。
自分の弱さと向き合うなんて楽しいはずがない。苦しさでしかない。そしてそれら大体がモヤ〜とした霧の状態なのにそれらをわざわざまた言語化する。
考えるだけで目が眩む。放り出したくなる。
最新曲"22"ではこのような歌詞があった。
"こんな苦しいなら選ばなきゃよかったのかな"
これを聴いた瞬間、片桐さんの日々の辛さが手に取るように分かるようで、胸が苦しくなった。それでも最後にはこれからも歌うと決意が示されている。
ぼくは弱い人間だ。
何にも出来ないし何者にもなれない、さらには何をしたいのか何が好きなのか何を求めてるのか何になりたいのかすら分からない。
そんなことに長い間、蓋をして生きてきた。
そしてHakubiに出会った。
自分の弱さに真っ正面から懸命に向き合う音楽を知った。
そして自分も一度、己の弱さと向き合いたいと思った。
結局こうやって生きようとかそんな決意は出せずままだけど、抗うことや向き合うことに意味があるのかな、なんて思う。
もうあと数年経てば30になってしまうけど、生きるためにもがいている大人がたまにはこうやっていてもいいんじゃないかな、なんて思う。
そんなことを思ったきっかけは何者でもない、Hakubiの音楽だ。
自分の生き方を教えてくれた。
これが僕のHakubiが好きな理由。